厚生労働省から2005年5月30日付けで、現行の日本脳炎のワクチン接種の積極的勧奨をしない(つまり、ワクチンの接種を行うように積極的には奨めない)ようにとの通達がありました。これは、昨年7月に起きた重症のADEM(急性散在性脳脊髄炎)が現在使われている日本脳炎ワクチン使用との因果関係がある、と認定された(但し、科学的な因果関係についての厳格な証明はされてはいない)ことによるものです。
厚生労働省としては、今後は、現在のマウスの脳を使ったワクチンの製造を中止し、その代わりに、より接種に伴うリスクが少ないとされる組織培養法によるワクチン製造(こちらの方が製造コストがかかることもあって、ワクチンの製造業者は製造法の転換に消極的であったという経緯もあった)を行う予定で、この新しいワクチンの供給が可能となった時点(早ければ、来年)で、改めて、日本脳炎ワクチンの接種勧奨を再開する予定との事です。
それまでの間は、海外渡航の予定がある、蚊に刺されやすい等、日本脳炎に感染する可能性が高いと認められる者などで、その保護者が特に接種を希望する者についてのみ、今回の通達の趣旨ならびに日本脳炎の予防接種の効果および副反応の説明を受け、これらに対して同意していただける(同意書にその旨を記入して頂きます)方については、これまで通り、現行の日本脳炎ワクチンを無料で(つまり公費を使って)接種して頂いても良いことになっています。
- 日本脳炎とは
コガタアカイエカによって運ばれるウィルスが原因となって起こる病気であり、このウィルスはブタの体内で増殖し、これを蚊が吸血した上で、再び、ヒトを刺すことによって、感染する。一度発症すると、重篤な脳炎を起こす可能性が高い。症状としては、38〜40℃台の発熱、頭痛・嘔吐・意識や神経系の障害がある。死亡率は15%で、特に幼児や高齢者の死亡率が高い。後遺症は、生存者の45〜70%に報告されている。1966年以前には、年間1000人を越す患者が出ていたが、最近10年間の患者は年間10人を下回っており、2004年は4人であった。なお、ヒトからヒトへの感染例は報告されていない。
- 日本脳炎ワクチンの副反応について
- 日本脳炎ワクチンはこれまで年間約400万人がうけており、その中で、ワクチン接種後のADEMは、100万人に1人の割合で生じるとされている。1991年以降では、計14例発症しており、その内で5例がまひが残るなどの重症となっている。
- その他には、2003年には副反応で約80名に被害が出ているとの報告があり、そのうち、脳炎や脳症を起こした者が8名、他に、アナフィラキシーショックと呼ばれる急性のアレルギー反応や、39度台の発熱などが報告されている